唐突だが、少し、筆者の体験を話そう。
水曜日の放課後、学校の課題をこなしているときのことだった。
教室の外から、生物研究会顧問の声が私の名を呼んでいた。
突発的に生物研究会の活動が始まることはさほど珍しくもない。
聞けば、どうやら、埼玉工業大学でちょっとした意見交換の機会があるらしく、
それに同行してみないかという話だった。
見識が広まるのであればと、肯定的な返事を返しつつ予定の日付を確認する。
……私の腕時計は一体いつから狂っていたのだろう。
話に聞く予定日と、腕時計の示す日付が一致している。
これでは、まるで今日、何ならちょうど今から行くようではないか。
結論から言うと、私の腕時計は正常だった。
日付を間違えていたわけでもない。
「まるで」ではなく、「まさしく」今日の話だった。
ここまで唐突なのは、今回が初めてだ。
まあ、本をただせば、急な日程の変更が連絡の持つ意味のおよそ九割を奪ったらしいので、
理不尽というわけでもないのだが。
話を戻そう。
上記のようなやり取りを経て、私たちは埼玉工業大学へ訪れることになった。
ちなみに、私を除いて二名ほど似たような流れの末に同行することになっていた。
意見交換の内容についてだが、端的に言うと、
水槽の設計についてだった。
発表用のアクアリウム(水槽と同義)の設計について、生物研究会顧問から、
大学生へ向けてアドバイスと両者の意見交換。
この二つが、今回の目的だった。
発表用というのは、「INNOVATE AQUARIUM AWARD」というプロジェクト
にて発表するためのアクアリウムということである。
海・川・湖・沼など生態圏とされる場所を再現するアクアリウムというのが応募条件だ。
なるほど、どうりで水槽が並んでいるわけである。
見たところ川の生活圏の再現に取り組んでいるようだった。
川魚とみられる魚類の他、両生類も飼育していた。
素人目には随分と順調なように見えるが、さらなる改良を目指すのは
流石大学生、ということなのだろうか。
話した内容は主に浄化槽のこと、
複数の理由(主に筆者の知識不足)により詳細は伏せるが、
できるだけ分かりやすく説明するなら、
浄化槽の改良、それも菌を利用したもののようだった。
菌には空気を好む好気性のものと、空気を嫌う嫌気性のものとの二種類が存在し、
今回利用するのは嫌気性のものだそうだ。
空気を嫌うため、密閉状態でかつ細かな石を敷き詰めて空間をできるだけ無くす。
そうして菌の繁殖を促し、増えた菌で効率よく水を浄化するというわけだ。
他には、飼育している両生類についても話をしていた。
飼育しているその両生類は有毒のものであるらしく、その毒の出所が不明なため、
良い調査方法はないか、とのこと。
不明といっても全くの未知、というわけでもなく、フグ毒に似ていること、
飼育している水槽の水から毒が検出されないことから、蓄積されない(分解される)ことも
分かっている。
そのため、より詳しく条件を絞り込んで検証、考察をしたいのだそうだ。
なかなか面白そうな取り組みである。
上記の二つが、今回の話題だった。
水槽と一口に言っても膨大な種類が存在するようで、設計図をあれこれ見比べながら
意見交換をしていた。今日の水族館で用いられている設計も多々話題に上がり、身近に感じる部分もあった。
埼玉工業大学の取り組みを参考に、私たちもより一層、研究、発信に力を入れていきたい。
余談だが、タイトルの水槽学という分野は、あるにはあるが、あまり一般的な言葉ではない。
試しに検索してみると良い。
さかなクンの記事が出るぞ。いやホント。
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